世良 その日の晩見た夢は、悪夢だった。
 私にとって、悪夢とは真実。
 真実とは、弄っていない人の記憶、気持ち、感情・・・。
「世良っ、起きろよっ!!」
「う〜ん、京・・・、っと螢」
「きょう・・?」
「いや、今日はいい天気だね♪」
「・・・、なんで窓も開いてねーのにわかるんだよ。あれ、泣いているのか?」
「ああ、ちょっと夢が悲しくてね」
「へ−、あっもしかして、京子さんにふられた夢でも見た?」
「!」
 自分の顔が凍りつくのがわかる。
「ごっごめん。あっそうだ、朝ご飯できてるから食べようぜ」
「そうだね、螢」
「あの、本当にごめんな。夢のことなんか気にすんなよ」
「そうだね」
 本当に、夢だけなら気にしないんだけどね。
「そういえば、俺も変な夢みた。お母さんに抱きしめられる夢なんだよ。生まれてすぐに捨てられたはずなのに、変だよなぁ」
「母親に抱きしめられる夢?」
「顔とかは見えなかったんだけどね。俺もまだまだ子供ってことかなー」
「顔は見えなかったんだ・・・」
「そういえば、お前の家族は?」
「私?」
「そう。お前って家族の話とかしないじゃん」
「両親は幼い頃死んだ。今は、妹が一人いる」
「へー、妹さんがいるんだ。お前に似て美人?」
「外見上は」
「へー、会ってみたいな」
「会わない方がいい・・・。螢、早くご飯食べ無いとまた冷めるよ」
「んっあっああ」
 螢は不思議な表情で私見る。私はその視線を無視して食堂に行った。

「ごちそうさまでした。やっぱり、螢のご飯は美味しいね」
「ありがとう。じゃあ、俺は学校に行くから片付け頼むね」
「ああ、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
「気を付けてね」
「わかってるってっ、うわあっっ」
 ガンッ
「螢?」
「っと、大丈夫?」
「螢どうした?」
「どうしよう、世良。ドアを開けたらちょうど女の人が立っていて、頭突きくらわしちゃった」
「まったくお前は・・・。まあいい、螢は学校に行きなさい、私が手当てと謝っておくからっ・・・」
「もう、何なのいきなりっ!!」
「ごっごめんなさい」
「・・・・」
「あら貴方、もしかして・・・」
「ん?」
「なんでお前が・・・」
「世良、知り合いなのか?」
「世良は私の兄よ」
「ということだ。螢は早く学校に行きなさい、遅れるよ」
「世良、なんか顔色悪いけど」
「なんでもない、大丈夫だ」
「ねぇ兄さん、螢ってことはやっぱり、京子さんの?」
 狙ったように綺羅(きら)は、螢に聞こえるように言う。
「えっ?」
「螢、早く学校に行きなさい」
「えっでも・・」
「兄さんが京子さんの子供と一緒に暮らしているとはね、未だに未練があるわけ? それとも、罪滅ぼし?」
「綺羅っ!!」
「世良・・・」
「螢、学校に行きなさい」
「でも、・・・」
「行ってきなさい。帰ってから話すから」
「うっうん・・」
「行ってらっしゃい」
綺羅「兄さん、顔がひきつってるわね」
「お前、何しに来たんだ」
「兄さんに会いに来たに決まっているでしょ」
「なんで、螢にあんなことを言ったんだ」
「真実を知る権利は誰にだってあるわ」
「・・・」
「とりあえず、さっき打った所を冷やしたいの、中に入っていい?」
「・・・」
 私は無言で扉を大きく開ける。
「ありがとう」
 嘘は、真実にはなれない。
 悪夢の続きが始まってしまった・・・。

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