その日は雪が降っていた。
「景子、ごめん!先生に捕まっちゃってさ、前回授業をサボった事を追求されちゃった」
「それは、災難ねぇ。じゃあ、帰りますか」
「うん!」
 景子はいつもと同じ表情だった。どうやら、私が遅れたことは怒っていないらしい。でも、遅れた言い訳はきちんとしておきたいものである。私は、さっき先生と話した内容を話し始めた。
「あのさぁ、聞いてよ。先生に捕まった時にね、何て言われたと思う?」
「真面目に授業に出て来い!!って言われたんじゃないの?」
「まあ、それも言われたんだけど。いきなり拳を握り締めてさぁ、世界中には学校に行くどころか、食べることさえもできない人々がいるんだ。真面目に学校に来る気が無いのなら、学費をその人達に寄付しろっ!! だってさー。笑っちゃうわよね」
「そうね」
 景子はクスッと笑った。でも、すぐに真面目な顔になって私の名前を呼んだ。
「何?」
私はきょとんとした顔で景子を見る。
「ねぇ知ってる?地球ってすごいの」
「ぷっあはははっ。なーんだ、いきなり真面目な顔になるから、もっと凄い事を言うのかと思った。地学を勉強してるんだから、そんな事くらい知ってるって。やーねーもぉ」
 私はゲラゲラ笑いながら、景子の肩を叩いた。でも、景子は相変わらず真面目な顔のままで話を続けた。なんか変な感じ。
「人類はどんどん増えていっている。だから、地球は天災や伝染病を起こす。そして、人類の数がある一定の量を超えないようにしている」
「景子、どうしたの?なんか、変な番組でも見た?」
「でも、今はかつてないほど人口が増えている。その訳は、現在の医学が地球の予想よりも発展しすぎた為。伝染病で死ぬ人の人数が、地球の予想していた数より大幅に少なくてすんでいるからなの。それでもやはり地球は偉大だから、伝染病の変わりに天災が最近増えてきているわ。これからも増えていって、きっと人口問題を解決するわ」
 そう言い終わって、景子はにっこりと笑う。
「・・・」
 私はどう返事したらいいものかと思って、言葉を探す。
「どうしたの?」
 景子は黙り込んでしまった私を心配そう見る。
「なっなんでもない。つっつまり、地球が人類の数を調節してるって事ね」
「そうよ。人間は地球によって間引かれているの。つまり、地球は私達にとっては神なの。そして、神に嫌われると、恐竜みたいに一瞬で絶滅してしまうわ」
 景子はやけに熱心に話している。ついつい私も納得されそう。一応、道理はあるみたいだしね。
「へぇー、そういう考え方もあるわよね」
 景子は満足げに微笑んだ。
「この話は、ある人が教えてくれたの。その時、なんかすっごく納得しちゃった。ああ、そうなんだってね」
「ふうん。で、ある人って誰?」
「ふふっ、内緒」
 意味ありげな含み笑い。気になるじゃないか。
「あっ何、そのリアクション」
景子は、笑って走りだす。
「ふふっ。じゃあ、もう別れ道なのでバイバイ!!」
「もおっ、絶対に明日聞き出してやるぅ!」
「クスッ、健闘を祈る!」
「景子!!!」
 景子は楽しそうに笑いながら、走っていった。
 私はため息をつき、テクテクと歩き始めた。
 あーあ、それにしても今日の景子って変だったなぁ。なんか怪しい宗教にでも引っ掛かったのか?
「地球が人間を間引く、か」
 私は、ぼそっとつぶやく。ふとその時、後ろから声がした。
「そこの女の子、危ないっ!!」
「えっ?」
 キィィィーという、嫌な音が耳に響く。
 見開いた私の目が最後に映した者は、パニックになっている運転手だった。
『地球は、天災や伝染病で人間を間引く』と景子は言った。では、人災で間引かれる私は何?
次第に薄れていく意識の中、微かに景子の声が聞こえた気がする。『人災の死は、人間滅亡の一歩よ』と。

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