一
俺達は今スキー場にいる。
俺、明(あきら)と幼馴染みの治(おさむ)は毎年冬になるとスキー場に行くのが習慣になっていて、もちろん今年も例外ではない。その目的は二つあって、単純にスキーを楽しみたいからと可愛いもしくは美人の女の子と知り合いになるためだ。
「なあ明」
「ん?」
「俺たち別に不細工ってわけではないよな」
スキー場を見回しながら治はポツリとつぶやく。
「まあ、そうだな。ずば抜けてカッコイイってわけでもないけどな」
「理不尽だ。ほら明、あんな奴にも彼女がいるんだぞ。なんで俺らには出会いがないんだ?」
地団駄を踏んで悔しがる治をなだめようと声をかけつつ、こいつをなだめる為の一番の特効薬、美女を探した。
とりあえず、一番人の観察ができるリフトの方を見た。
偶然、その時リフトから降りた女性と目が合う。その人は俺を見てにっこりと笑った。地元の子だろうか、肌の色が白くて目鼻立ちの整った美人だ。
「治、美人がいるぞ」
治の脇を肘で突っついて、ぼそっとつぶやく。
「えっ、どこどこどこ!!!」
さっきとはうって変わって目を輝かせながらきょろきょろと辺りを見回す。
やっぱり、こいつって単純・・・。
こういう反応を示すからいつまでたっても彼女ができないんだよ・・・。
俺はリフトの方だと教えてやった。
「あっ本当だ。しかも2人じゃん。なあなあ、声を掛けてみようぜ」
「2人?」
俺は治からリフトの方へと視線を移す。
治の言う通り俺に微笑みかけた美女の隣に同じく色白美人が立っていて、なにやら2人で話し合っている。
「なあ明、声を掛けよう」
「でも、あれだけの美人だし彼氏とかいるんじゃないのか?」
「かーー。お前っていっつもそうだよな。そのお前の一言のせいで何度チャンスを逃した事か・・・」
ぶつぶつと文句を言う治に、声をかけて彼氏に殴られた事もあっただろうがと反論しようとしたが、鈴の音のような可愛らしい声を掛けられて俺は反論の機会を失った。
「?」
「こんにちは」
声のする方を見ると、あの美女2人組みが微笑んでいた。
「こんにちは♪」
すかさず俺と美女の間に割り込んだ治は上機嫌で挨拶をする。
「お2人だけですか?」
リフトで最初に目が合った方が、そう俺たちに話し掛ける。
「ええ、もちろんです。そちらもお2人だけですか?」
嬉々とした表情の治が、俄然張り切って対応する。
コイツは、全く・・・。
「ええ、そうです。もしよろしければ、一緒に滑りませんか?」
「貴方がたのような美人にそういわれて断る男はいないでしょう。是非ご一緒させてください。野郎が2人で滑るっていうのもなんか変ですから」
治は誘いを即OKした。
この状況は、幸運というべきなのだろう。でも、なぜか俺の胸には一抹の不安が生じていた。
それは理由なんてない、本能的なもの。
そんな俺を超上機嫌な治が、引っ張る。
「どうした、行こうぜ。こんなチャンスもうないぜ」
「あっああ・・」
俺はその不安に気が付かないふりをして、治と美女の後に付いていった。