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「お名前は?」
 美女の内の一人、リフトで俺を目の合った方が俺の側によってきて微笑みかける。
「明です。貴方は?」
「奈津(なつ)といいます」
「へー、奈津さんて言うんだ。地元の人?」
「ええ」
「でも、それだけ綺麗だったら男がほっとかないだろ?」
「いいえ。そちらこそ、女性がほっとかないんじゃないですか?」
「俺達は、ほっとかれっぱなしです」
「嘘。姉さんなんかお連れさんを見て一目で気に入ったんですよ。で、私に話し掛けてくれって頼んだの」
 クスクスと楽しそうに笑いながら、そっと前の2人に目をやる。
 なるほど、確かに前の2人はいい感じな雰囲気だ。
 雪のせいかもしれないが、2人とも頬を赤く染めて楽しそうに話している。
「治のやつ嬉しそうだな」
 本当は俺だって嬉しいはずなんだけど、なぜか胸騒ぎが止まない。
「ねぇ、2人っきりにしてあげない?」
「えっ?」
「だって、私たちお邪魔でしょう?」
 奈津はにこっと微笑む。
 前の2人を2人っきりにするって言う事は、必然的に俺たちも2人っきりになるってことだ。
 いつもなら、願ってもないチャンス。
「・・・・」
「私と2人は嫌?」
 そういう風に悲しそうな顔されると辛い。
 なんだかんだ言っても、俺も美女には弱い。胸騒ぎがするが、ここで引く様なら男じゃないだろう。
「そんなことないよ」
「よかった。じゃあ、あっちで滑りましょ」
 奈津は俺の手を取って治とは逆の方向へ駆け出した。


「奈津さん、そろそろ帰りませんか?」
「もう少し、滑りましょうよ」
「でも、治を探さないといけないし。それに、なんか胸騒ぎがするんです。もしかしたら、今日吹雪になるのかもしれない。だから、帰りましょう」
 俺はやさしく微笑んで手を握る。
「明さん、本当は私と2人でいたくないんでしょう」
 奈津は、すねたような声を出してそっぽを向く。
「違うよ。俺の胸騒ぎは良く当たるんだ。実は、今日君たちに会ってから胸騒ぎがしたんだ。多分これは、君たちと一緒にいるのが嬉しいから遅くまで遊びすぎて吹雪に巻き込まれてしまうことを暗示しているんじゃないかな。確か、ここって毎年吹雪に巻き込まれて誰か死んでるだろ?」
「そうだけど・・・」
「俺は君を危ない目に合わせたくないんだ。話なら、ホテルでもできるしね。帰ろう」
「私はまだ貴方と滑っていたいのに・・・・」
 奈津は不服そうな顔をしてごねる。
 でも、時間が経つにつれて俺の胸騒ぎがひどくなってきているのも事実だ。
「また、明日一緒に滑ろう。まだ俺たちしばらくここにいるしね」
「でも・・・・」
「帰ろう」
「・・・・」
 俺の胸騒ぎは今まで外れた事がない。
 しかたがないので、俺はかなり強引に奈津をつれて帰った。
 そしてそれから一時間後、やはり俺の胸騒ぎは的中した。
 急に天候が悪くなったかと思うと、いきなり雪が降り出して吹雪となった。

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