四
重い目蓋をゆっくり開くと、見慣れない天井と見慣れた両親の顔が見えた。
「明っ!!」
「明」
わっと泣き出した母とほっとした表情をつくった父、そして右手に刺さっている点滴の針と独特の匂い。
「ここは病院?」
「明、あんたは吹雪にあって凍死しかけたんだからね!」
「治は?」
母は俺からふいっと顔をそむけた。
代わりに、父が悲しそうな顔でゆっくりと告げた。
「治くんは行方不明だ。でも、おそらくもう生きてはいないだろう・・・・」
「そんなっ!!」
でも、俺は治の声に呼ばれて歩いていたのに・・・・。
「ショックだろうが・・・・」
じゃあ、奈津さんのお姉さんも・・・。
「父さん、他に行方不明になった人はいた?」
「いや、お前たちだけだよ」
「治と一緒に女の人が居たんだ」
「そんな情報は聞いたことがないが」
「でも、・・・」
「明、とりあえず安静にしろ。治くんのことは私が調べておくから、お前は寝なさい」
「・・・・・はい」
治の行方は結局わからなかった。遺体さえ見つからない。
治はどこへ消えたのだろうか?
そして、治と一緒にいたはずの奈津さんのお姉さんの情報は何一なかった。
ということは、奈津さんのお姉さんは助かったのだろうか?
それらの疑問に引きよせらっれるように、俺は再びそのスキー場に来ていた。
「学生さん」
「?」
しゃがれた声に振り向いてみれば、老婆が微笑んで立っていた。
「いい男が一人でこの山に来てはならないぞ。この山には雪女が出るからな」
「雪女?」
「ああ、スキーウエアをきた美女がな」
「スキーウエア?」
「雪女も時代の流れに沿って格好も手口も変わるだろうて。ナンパ目当ての男どもを狙っているらしいな。ほれ、一週間前にも一人行方不明になってしまったじゃろ?」
ナンパ目当ての男を狙う・・・・・。
スキーウエアの美女・・・・・。
また、胸騒ぎがする・・・。
まさか、あの二人の美女が雪女?
「あの、その雪女から人を助け出す方法ってないんですか?」
「雪女から人を助け出す方法じゃと? ここの雪女は人を捕らえてからしばらくいたぶるために生かしていると聞く。もしかすると、雪女の根城に行けば助け出せるかもしれぬな」
「しばらくってどのくらいですか?」
「三ヶ月じゃ」
治の行方がわからなくなったのは、二ヶ月前。まだ、間に合う。
「わかりました。ありがとうございます」
「学生さん。雪女が進化しつづけていることを忘れるでないぞ」
「はい」
俺は、雪山へと歩み始めた。
全てのものは進化を続ける・・・・
-終幕-