·<>·<>·<>·<>·二章·<>·<>·<>·<>·

 私は明るい日差しで目を覚ました。
「んっ、あっもう朝か・・・」
 ぐーっと背伸びをして、私は飛び起きた。
「さあ、貴行様のところに行かないと。今日の食事は何にしようかな・・・・。貴行様の好きなものって一体なんなのだろう? 帝と一緒かなぁ」
 いろいろと悩みながらも、私はテキパキと用意を整えていく。でも、ふと鏡に映った自分を見て動きが止まった。
 首に残る手の痕・・・・。
 自分の手を喉に当ててその痕を触れて確認してみる。
 あれは、夢ではない現実・・・。
 『とっとと失せろっ!!』
 その証拠に、まだ耳に残っているあの人の叫び・・・。
「・・・私では、あの方のかわりにはなれないのかな・・・。貴行様の傷を癒す事は永遠にできないのかもしれない・・・。でも・・・」
 それでも、私は努力してみたい。私の心の中にいる幼いころの貴行様を取り戻したい。
 そして、貴行様には幸せになってもらいたい。
 私は荷物を握り締めて、自分の屋敷を勢い良く飛び出した。
*   *   *
 変だ。私は屋敷についてそう感じた。
 いつもに増して静か過ぎる。まるで、誰一人居ないかのようだ・・・。
 胸騒ぎがする。
「貴行様! どこにいるんですかっ。返事をしてください! 貴行様っ!!」
 屋敷をうろつきながら名前を呼んでも、返事が無い。
 ドクン・ドクン・ドクン
 急に心臓の音が激しく鳴りだす。
「貴行様っ! 貴行様っ!」
 狂ったように貴行様の名前を呼び名がら、私は屋敷中を探した。
 屋敷を探し終わった頃、私の声は嗄れていた。
 屋敷には居ない。
 私は、庭へを視線を向ける。
「あっ・・・」
 庭は踏み荒らされていた。しかも、血痕もある。
 昨日はこんな風ではなかった・・・・。
 心臓が鷲づかみされたようにぎゅうぅっと苦しくなる。
 呼吸さえも、上手くできない。
 昨日ここで何かあった。そして、さらわれた・・・?
 もしや、誰かが宝欲しさに貴行様を誘拐したとか?
 激しい鼓動がさらに激しくなり、体中が心臓のようだ。
 昨日ここに居れば良かった・・・。
 新しい後見人が決まるまでの間。今が一番狙いやすい事は誰が考えても明白なのに、私は馬鹿だ。
 例え貴行様に疎まれようとも、ここにいて守らなければならなかったのに・・・・。
 後悔が嵐のように現れてくる。
「ああ、もう!! 今、後悔してぐだぐだ考えても仕方が無い。今は行動を起こさないといけない。 よしっ、片っ端から手がかりを探そう。そして、絶対に見つけなければ・・・」
 まず私は門の所に牛車の跡があったことを思い出し、そこへ走った。
 昨日の雨のおかげで、牛車の車輪のあとがはっきりと残っている。
 車輪の跡は2種類。
 一つは内大臣様のものだろう。そして、もう一つが昨日私がこの屋敷を去ってからやってきた人のもの。
 内大臣様の屋敷の方角と溝の深さを考えると一つに絞れる。
 私は、特定した牛車の溝の跡を見据えた。
 貴行様、必ず貴方を見つけ出します・・・

*   *   *

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