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最終章(行き着く先)
まぶしい太陽の光が顔に当たっているのを感じ、私はゆっくりと目を開ける。
「姫、目が覚めましたか。もう昼ですよ」
薫の声・・・。
今、私は何をしている? 兄上を助けるのではなかったか?
「薫、兄上は?」
私は、ガバッと起き上がり薫に詰め寄る。
薫はばつが悪そうに目を伏せた。
「薫っ!!」
「亡くなったよ。春野殿と一緒に」
私の目に涙が溢れてくる。
「ああっ兄上・・・」
体中の力が一気に抜け、目の前が真っ暗になる。
「双葉姫、しっかりしてください」
薫が私の体を支える。私はすがりつくような目で薫を見上げた。
「薫、兄上はなぜ自殺をしたのじゃ? 宝はあと一歩で手に入ったのに、なぜ・・」
「殿は、宝を手に入れるために宝よりも大切なものを失ったのです。それに、宝が見つかれば今度は宝を巡っての争いになります。その争いでまた大切な人を失うのが恐かったのではないのですか?」
薫は落ち着いた口調で私を諭すように言う。
「兄上は、私たちを守ろうとしたのじゃな。自分の命を絶つことで、宝の呪縛を解こうと・・・」
「おそらく」
「ふふっ、兄上は馬鹿じゃ。宝の呪縛から逃れても、光である兄上が消えた私にどう生きろと?」
自嘲気味の笑が唇から零れる。瞳からは、薫の顔が見えないほど大粒の涙が溢れて来てどうしようもない。
「双葉姫、俺は姫の光にはなれないって言ってたけど、光をだす太陽ではなくて、月にならなれるかな」
薫の声は、優しい響きで心に良く届く。
「馬鹿か。月は太陽がないと輝かぬ」
「俺の光は姫だから、俺は輝ける。姫を導ける。だから、一緒に行きよう・・」
薫は優しく私を包む。
「なんか変な理屈だな。でも、・・・」
こいつの腕の中は気持ち良い・・・。
私は薫にしがみつく。薫の鼓動が早くなっていくのが聞こえる。
「兄さん。そこから先は、俺の視界に入らない所でやって欲しいんだけど・・・」
後ろから雷の声がする。薫は慌てて私を抱き寄せていた手を離して、声の主に顔を向ける。
「雷、傷は大丈夫か?」
心なしか薫の顔は赤い。
「兄さん、顔が赤い・・・。俺声をかけない方が良かった? でも、なんか目の前でいちゃつかれるのもなんかね」
「いちゃつくって、お前・・・。そんなことより、傷はどうなんだ?」
「傷は大丈夫だよ、俺が打たれ強いの知ってるでしょ。それに、兄さんの傷の方が酷いだろ。そう思わない、双葉さん?」
雷は、後半の台詞を兄上の声色で言う。
「兄上の声・・・」
私はようやく涙が止まってきた瞳を大きく見開く。
「俺は人に扮するのが得意なの。声色ぐらいすぐに真似できるさ。なんなら、格好まで真似してあげようか? 双葉」
雷は兄上の声でそう言って、私にウインクをする。
「らーいー」
「嘘だってば、兄さん。目がマジになってる」
雷はクスリと笑う。
「お前の嘘は、心臓に悪い」
「そんなに似てる?」
「うん、そっくり!」
私は思わず即答してしまった。薫は、また雷に訴えかけるような眼差しを向ける。
「兄さん大丈夫だって。俺は兄さんのものに手を出すような真似はしないって。あれ? 兄さん、顔が真っ赤だよ」
「姫は俺のものじゃない」
「ああそうか、兄さんが双葉さんのものなんだ」
「いや、だからそうじゃなく・・・」
薫は真っ赤な顔をしてうろたえる。
こういう薫は珍しいのでもう少し見ていたい気がするが、気の毒なので私は助け舟を出した。
「薫は私のものじゃ。私の月になると言った」
助けたつもりが薫の顔は益々赤くなる。
「へぇー、月ねぇ。メルヘンチックね♪」
春野殿の声っっ!
「らっ雷っっ!!」
私達は、ビクッとして雷の方を見る。
「何、そんな驚いた顔して。今のそんなに似てた?」
「似てるも何も、心臓に悪いほどそっくり・・・」
私は、感嘆した。
「礼を言うぞ、薫」
「なっ・・・」
薫の目が思いっきり見開かれる。
「これも似てる?」
「似てるから、姫の真似なんて止めろ」
どうやら私の声色だったらしい。
「マジ、俺って女の声色も出せるのか。これだけで儲けられそうだ。じゃあ、そろそろ出発しようかな。あんまりここに居たら、出発しにくくなるしね」
雷は人懐っこい笑顔で微笑んだ。そして、扉の方に歩いていく。
「雷、ここは俺の家だからお前も居ていいぞ」
雷は扉を開けて、振り返る。
「バーカ。新婚さんの所に居候するほど野暮じゃないよ」
薫の顔は、一瞬にしてまた赤くなる。
「なっなっ何言って・・・」
「クスッ。我が兄ながら可愛いな。俺は自分の道を探しに行く。たっしゃでなっ!!」
そう言い終わると、雷の姿が消えた。
「雷・・・」
薫の顔はなんとなくしゅんとなる。
「新婚ねぇ。でもまあ、兄上がいなくなって私は居場所を無くした。もうお前しか頼れない。私をここに置いてくれるか?」
私は薫の目を見つめる。
「もちろんです、姫」
薫は微笑みながら答える。
「もう、姫じゃなくて双葉だ。お前もそう呼べ」
私はにっと笑う。
「では双葉」
「なんじゃ?」
「大切にしますから」
「安心しろ、私は壊れにくい」
「でも、大切にします。やっと手に入れたから・・・」
薫はそっと私を抱きしめる。
そして、そっと薫の顔が近づいてくる。私は、目を閉じた。
兄上、私は薫と共に歩いていきます。
エピローグ
宝の在処を印す者が二人消え。もう一人の者の背中からも印しが消えた。
そして、宝は再び眠りにつく。再び覇王となる資質を持った人が現れたときの為に・・・。