[PR]生年月日で2010年運命占い:初回無料!貴女の悩みを占い師に相談


 九章(宝よりも大切な物)

「薫、春野は私が引き受ける。双葉を連れて早く城から去れ!」
 兄上はそう言って薫と春野殿の間に割り込もうとするが、それを遮るように小刀が兄上の前に突き刺さる。
「あんたの相手は、俺だよ」
 雷がにこりと兄上に微笑みかける。その仕草が妙に薫と似ていて、兄弟なのだと改めて思う。
 兄上は雷をじっと見つめて、穏やかな口調で話す。
「あの時の奴か・・・。私を殺せという命令は下ったのか?」
「了解は出たよ。それに、春野様を守るのが俺の使命だ」
 雷は今にも噛み付きそうな様子で、兄上を睨む。
「春野も良い忍びを持っている」
 兄上は顔に微笑みを浮かべながら、雷に向かって刀を握り締める。
「やあぁっ!!」
 カキーン
 雷の刀が兄上の力によってあっけなく跳ね飛ばされる。どうやら、雷という忍びは刀は不得手のようだ。
「くそっ!!」
 刀をなくした雷は兄上に飛び掛ろうとする。兄上はそれを紙一重で避ける。彼らはそれを何度の繰り返す。
 雷の目には、憎悪の色が鮮明に現れている。雷という人は、本当に春野殿が好きなのだろう。例え報われぬ思いであったとしても。いや、報われないからこそこんなに必死になれるのかもしれない。同じく報われない春野殿の気持ちが、痛いほど良くわかるから・・・。
 嫉妬、恨み、使命。雷は狂ったように兄上を攻撃し続ける。
 しかし、恨みならば兄上も負けていない。一見いつもと変わらぬ表情をしているが、見を包む雰囲気が明らかに違う。おそらく兄上は気がついている。今戦っている相手が、雷が、郁殿を毒矢にかけた本人であるということを。
 兄上と雷の戦いはしばらく続いたが、刀を持っている兄上が有利な事は当たり前。いくら忍者である雷のスピードが速くても、永遠にそのスピードが持続できるものではない。雷の疲れが見え始めた頃、兄上は雷に一太刀あびせた。
「うわぁっっ!!」
 急所が外れているのは見てわかる。それでも、疲れがどっと押し寄せてきたのか、雷は血が飛び散るのと同時に倒れた。
 薫はその雷の悲鳴に反応した。春野殿との戦いの最中であるのに、条件反射であろうか? 雷の方を一瞬見てしまう。
 春野殿はそんな薫の隙を見逃すような人ではなく、薫もまた切りつけられる。
「くそっ!!」
 薫はガクッと膝がくだけて、肩で息をしながら春野殿を睨み上げる。
「真剣勝負に余所見とは、私も随分甘く見られたこと」
 そう言って、春野殿は微笑みながら薫の腹を蹴る。
「うぐっ」
「薫っ!!」
 私は蹴り飛ばされた薫を庇うような感じで抱き起こして、春野殿を睨んだ。でも、春野殿の意識はもうこちらではなく別の方に向いている。
「残ったのは、お前か・・・」
 兄上は、春野殿の視線を真っ直ぐ見つめ返してつぶやく。
「私はしぶといからね。できれば、か弱く育ちたかった。でも、この背中の印がそうさせてくれなかった・・・」
 兄上と春野殿はお互いに刀を構えて向き合った。
「宝よりも大切な物はあるか?と前に訊いたが、今はどうだ、春野」
 カキンッ
 2人の刀が触れ合い、金属音が出る。
「貴方を殺せば答えが出る気がする」
 カキンッ
「そうか、では殺してみるがいい」
 兄上は刀を下ろす。意外なこの行動に春野殿は振り下ろした刀を止められず、そのまま兄上の肩に食い込む。
「兄上っ!!」
「殿っ!」
「春野様・・・」
 兄上の血が私の顔まで飛び散った。
 致命傷ではないにしろ、このままだと出血多量で死んでしまう。
 私は春野殿を睨みあげて罵声の一つでも叫ぼうかと思った。でも、私は春野殿の顔を見て絶句する。
「なぜ、なぜなの、なぜっ」
 春野殿の瞳から涙が零れ落ちる。
「春野、どうした?」
 傷が痛いはずなのに、そんな様子を微塵も感じさせない口調で春野殿に話し掛ける。
 春野殿はそんな兄上を見つめて涙を流しながら、搾り出すように言葉を紡ぐ。
「憎い、憎い、貴方と郁が憎い。私はこんなにも苦しいのに、こんなにも辛いのに、いつだって貴方達は幸せそうだった。貴方は妻を娶っても、郁殿が特別なのは変わらなかった。いつだって貴方は郁殿のことを優先にしていた。そんな貴方達が憎い。そして、羨ましいの・・・」
「憎いなら、殺せばいい」
 そう言った兄上は心なしか微笑んでいるように見える。
「殺さないわ。郁殿と同じ所なんかに、貴方を送ってやるものですか・・・。ずっと私の側において、最愛の人を殺した私の側にいて、苦しみ続けるがいいっ」
 屈折した告白のように取れる春野殿の台詞。『郁殿なんかに渡さない、貴方は私の側にいて欲しい』その様に私には聞こえる。
 郁殿と兄上に対しての嫉妬は私自身も覚えがある。春野殿の気持ちが少しわかる。
「春野・・・」
 兄上は負傷した腕で春野殿を抱きしめる。
「殿?」
 またもや意外な兄上の行動に、春野殿は驚いた表情で兄上を見上げる。
 もちろん、私達もあっけに取られている。
 そんな私達の驚きを気に求めず、兄上は春野殿にとろけるような微笑みを向けた。
 春野殿の顔が赤くなるのが、ここからでもよく見える。
「一緒に行こう。お前と郁の戦いを見るのも楽しそうだ」
 私達は、兄上の笑顔に見惚れてこの言葉の意味にすぐに気が付かなかった。
 兄上は刀を振り上げる。
 この時、私達は兄上がしようとしていることに気が付き、止めようとする。でも、反応が遅すぎた。
「兄上ぇー!!」
「春野様っ!!」
「殿!」
 伸ばした手が目標に達せず空を切る。
 兄上の振り上げた刀は、春野殿の体を貫通して兄上の体まで深く突き刺さる。
「いやあぁぁぁー!!」
 私の記憶はそこで途切れた。
 でも、記憶が途切れる直前に見た兄上と春野殿の顔は微笑んでいたような気がした。

最終章へ 戻る

  
[PR]寝てる間にウエストを矯正!:整形用特殊腹巻きモニター募集